本格的な般若心経の解説−だるまはむずかしいな−

真釈 般若心経→amazon
著者:宮坂宥洪, 出版年:2004, 出版社:角川書店
真釈 般若心経 (角川ソフィア文庫)
内容と感想
  ここ数ヶ月、般若心経の意味を知りたくて、いくつか本を読んだりホームページを見たりしていました。私が読んだ中で一番説得力があったのは、→密教21FORUMで宮坂宥洪さんという住職さんが書いた般若心経の解説です。宮坂さんはサンスクリット語が読めるそうで、般若心経のサンスクリット語原典を直接翻訳して、真言宗の立場から解説をしています。この本は上記のWebサイトの連載をかなり加筆してまとめた文庫本です。本屋で偶然見つけて、すぐ買いました。この本は「ちまたにあふれている安易な処世術を語った般若心経解説本」を批判して、般若心経の仏教における意味を深く論じています。


  読んでいると分ったような気になりますが、こうやって書くとなるとなかなか言葉が出てきません。自分が理解していないことが分りました。そんな私のような悟りとは程遠い人の感想です。般若心経の一般的な日本語訳(→たとえば、10月30日の日記の書評へ )と解説をよむと、「なにもかも全部空だよ」と書いてあって、解説も非論理的、意味不明、超情緒的なものが多いです。でも、この本はそういう「なにもかも空だよ」という考えに至る道筋を「修行の過程を4階建ての建物に例え」て説明しています。
  個人的に気になっていた、「般若心経を文字通り読むとあらゆる現象や事実、さらには釈迦の教えの否定である気がする」という点についても一応答えてくれています。宮坂さんによれば、般若心経が否定しているのは「だるまの実在」だけということみたいですね。
  本全体はめちゃくちゃ読む価値ありだと思いますが、ちょっと、過去の著者たちへの批判が鋭すぎて、「悟ったひと」には思えない言い回しが気になります。でも、内容自体はとても面白かった。いや、しかし今考えていたらやっぱり分からない。難しい。だるま。また、時期をみて再読します。