苦悩する手塚治虫のブッダ

ブッダ 1 (潮漫画文庫)

ブッダ 1 (潮漫画文庫)

内容
手塚治虫先生がまんがで描いた仏陀の生涯(文庫版は全12巻)。人間としての仏陀(ゴータマ・シッダルタ)の一生が基本的には歴史的事実に沿って書かれている。内容は仏典に沿ったものではない部分もあるが、あとがきには改変部分にも触れられていて十分な下調べの上に書かれた作品だと言うことが分る。この様な素晴らしい作品を漫画で読めるということにたいして、手塚先生には本当に感謝。


感想
全体としては山場がないというか、淡々と物語が進む。ただし、おそらく漫画としての面白さとのバランスを考えてか超能力などの神話的な要素も出てくる。仏教関係とくにブッダに関係した本(たとえば、ブッダ入門 (仏教 入門シリーズ))を読むと出てくる有名人物が漫画で登場するので、あわせて読むとより面白いと思う。

印象に残ったのは、ブッダがいろいろな出来事で苦悩する部分。手塚治虫先生の漫画では、たとえばブラックジャックが自分の無力を感じて頭を抱えるシーンなどとも重なる。私はこの「主人公が苦悩しているシーン」は手塚治虫先生自身の心の苦しみだといつも感じる。


心に残った一言「オオーッ…なぜわしを…わしをこの世に残して旅立った?わしはどうすればよいのだ…」12巻, p.217